野市「農学カフェ」レポート (2024/7/27)

 
7/27(土)の夜、9月から正式スタートする「野市」プレ企画、座談会【農学カフェ】をみんなの産直マルシェYottecoにて開催致しました。

テーマは「循環する暮らしの共有」

参加スピーカー

・豆に暮らす野の暮らし研究所の豆野さん夫妻
・こどもやさい自然農園の星野さんと娘さん
・指文(さしぶん)商店の小久保さん

参加してくれた方々は、それぞれに考えや農法は違えど、地元でこだわりと独自な姿勢を持って経営する農家です。

また、ご来場いただいた方には座談会の様子を公開ラジオのような形式で自由に聞き耳を立てて聞いて楽しんでいただきました。

※野市の正式スタートは9月28日です。
(時間は未定)
@noichi_soil
 

目次

農学カフェ

【農学カフェ】は「野市」プレ企画として、出店予定の農家さんとの座談会です。

明星ライブラリーでは2011年〜不定期で「農学カフェ」として「農」をテーマに座談会を開催してきました。(アーカイブはこちら)

ここでの「農」とは、畑などで作物を栽培する実際的な農業の他、人や社会が育つ創造的な環境を「土」として、「生きる・創る・育つ・育てる」も同じく「農」とする考えをもとにしています。

独自なスタイルで「農」の暮らしを営むみなさんのそれぞれの現状や最近の関心事、心のあり方など、地元に根付きながら持続可能な「つくる暮らし」を探究する実践者としての日々のことを、様々に聞き合いました。

この日、みなさんに見ていただいた2枚の落書きのような絵で野市と農学カフェのイメージをお伝えしました。


 

メディアコモンズ

楕円の敷地は「メディアコモンズ」。
それぞれの異なる木が育ち、健やかに育つための共有地としての場で一緒に耕し、学び、肥沃な生態系となるように根っこで繋がり合う場所の図。

もうひとつは、「正しさ」を議論するのではなく、それぞれのライフスタイルや価値観で生きる私たちが前提であり、「違い」を尊重するフラットな関係の図です。

作るものを交換し、出会いと情報が生まれる発信源。

そして、ここで交わされた内容からの発信が、ささやかでも誰かの元気と行動のきっかけになれば幸いです。

 
 
【参加スピーカー紹介】

◾️豆野仁昭さん・聡子さん
豆に暮らす野の暮らし研究所

豆に暮らす野の暮らし研究所は愛知県田原市若見町でオーガニックの野菜、ハーブ、米、鶏、果物を育て、個人家庭などに宅配をしている農家。

農家をしながら化石燃料や原発に頼らない自給的暮らしの探究をはじめてかれこれ20数年になります。

また「こどものがっこう」を通して、こども達の自主性を尊重し育てる場の主宰や、WWOOFのホストとして、これまでにたくさんの海外や国内からのウーファーさんを受け入れ、共に生活することでお互いの視野を広げる活動もしています。

小学6年生の息子さんと1歳の娘さんの子育てをしながら犬と猫と兎や鶏など、たくさんの生き物と共に暮らしています。

Instagram @mamenolab
 
 
◾️星野圭子さん・夢子さん / こどもやさい自然農園

こどもやさい自然農園は田原市で野菜や果樹の栽培と養鶏をして農産物を個人家庭などに販売しています。

圭子さんとの出会いは約15年前。圭子さんが田原市赤石町で託児所と併設のカフェを経営されている頃でした。

現在はこどもと野菜と自然が大好きで自分の「好き」の気持ちを大切に、「いのちが育つ」ことを変わらず探究しながら農業をしています。

圭子さんと出会った時にはまだ8歳だった次女の夢子さんが、成長して立派な大人になり、親子一緒に農業を営んでいることを感慨深く思います。
Instagram @kodomoyasai

 
 
◾️小久保勝大さん / 指文商店

田原市堀切町の指文(さしぶん)商店は創業60年の観葉植物農家。オーナーの小久保さんが育てる観葉植物はどれも丈夫で生き生きとしたものばかりです。

その理由は長年の経験と植物に大地の力を注ぐ栽培方法。手間はかかりますが根の育ちが良く、エネルギー溢れる植物になります。

また小久保さんといえば家族愛。奥さんと保育園に通う息子さんの存在が何よりもの力になっています。

サーフィンを楽しみ、トライアスロンにも出場するアクティブな小久保さんの夢は「子どもたちが楽しく農業が出来る未来をつくること」。

Instagramでは観葉植物の育て方や豆知識などの発信も楽しく発信しています。
Instagram @sashi_bun
 


 
この日に話された内容を断片的にご紹介します。
 

どうにも暑い!夏のこと

年々、夏の暑さが増しているかのような気候の変化に栽培作物も枯れやすく、暑い中での農作業もまさに「やってられない!」という現状。先日は高温環境が原因なのか、小久保さんが栽培中の植物約500鉢がたった1日で一気に枯れてしまったとのこと。

豆野さんからも「多品目栽培をしてきたがこれからはこの地域の気候に合った品目に絞ってやっていく方が良いのでは」という声。
 


 

それぞれの関心事  
例えば「Podcast」のこと

子育てや政治、自分らしく生きる暮らしへの関心を強く持つ豆野聡子さんの最近のお気に入りのひとつは、元広島県教育委員会教育長で教育者の平川理恵さんが出演するPodcastやVoicyをきくこと。

星野圭子さんは、先日で5回目の参加となった「豊橋有機朝市」での販売と交流を楽しみにしているそうです。

圭子さんもグループチャットアプリで全国の農家さんと会話を楽しんでいるとのこと。全国の農家さんが配信するPodcast番組も多くあるそうです。

みなさんはPodcastやVoicyなどの音声配信サービスを聴いていますか?
 
夢子さんのお気に入りPodcast番組は「コテンラジオ」。

コテンラジオは歴史を愛し、歴史を知りすぎてしまった歴史GEEK2人と圧倒的歴史弱者がお届けする歴史インターネットラジオです。

「コテンラジオ」番組紹介ページより。

 
他人が持つスマートフォンが映す世界は自分とは全く違うのです。

インストールしているアプリや接続するチャンネル、フォローする人や媒体がそれぞれに全く違うので、普段触れる情報も世界も、個人に特化した仕様となる傾向が以前よりも進んでいるように感じます。

そんな時代に、スマートフォンの中身やPodcastに限らず、隣の人が「当たり前」に見ている世界や経験にふと関心を持ち、教えてくれる情報に聞き耳を立ててみることは何気ない小さなことのようですが、そこから新しい扉が開かれるようで面白いことです。
 
私もラジオやPodcastを聴くことは日常に欠かせません。

ニュース番組やトーク系、語学系、経済経営系などを登録して更新されることを心待ちにしている番組がたくさんあります。

特に好きな番組は「バイリンガルニュース」。配信がスタートした2013年ごろから欠かさずに聴いています。

毎週木曜日配信の無料ポッドキャストで、日本ではあまり報道されない世界のおもしろいニュースを、マイケルとマミの二人が独自の「バイリンガル会話形式」で紹介しています。英語を勉強したい、という人にもとってもおすすめです。
 


※Podcast
“インターネット上に公開されている音声コンテンツを、ストリーミング再生や端末へのダウンロードを通して楽しむサービス”
※Voicy
“厳選された音声コンテンツを無料で“ながら聴き”できる音声プラットフォーム。


 
 
豆野仁昭さんがおすすめの本として持参してくれたのは『老子』でした。


 
旅をしながら世界の様々な現実を伝えるYou Tuber のBappa Shoutaさんや、NYを拠点にスタンダップコメディに挑戦しているウーマンラッシュアワーの村本大輔さんの話を交えながら、紹介してくれた『老子』の思想から、「ルールとは?」「制度とは?」など、社会の本当の姿や自分の道と向き合う豆野さんの姿もまた、哲学者のようだと感じます。

 

「自主独立に生きること」=「周りと違う」の心の持ち方

自分の道を探究し、独自のやり方で歩むことは、自ずと「人と違う」ことになるものです。道を信じて進む時、不安になることはあるのでしょうか?語られたそれぞれの心の持ち方やマインドについて、熱を持って聞き入りました。

自分が「思うこと」と他人から「思われること」。

心の葛藤はありますが、「思われること、思われるかもしれないこと」を心配して自分のやりたいことを諦めてしまうのは勿体無いことです。
 
参加者達の心のあり方を聞き合う内に勇気をもらうような気持ちになります。


 

「農民芸術概論要項」
 宮沢賢治

トークの中で参加者が何気なく話してくれた宮沢賢治による芸術論のこと。

「農」の暮らしの中で自分で決めたことを実践することは、アートや表現だという見方をすると力が湧いてくる、と話してくれました。

 

農民芸術の本質 

……何がわれらの芸術の心臓をなすものであるか……

もとより農民芸術も美を本質とするであらう
われらは新たな美を創る 美学は絶えず移動する
「美」の語さへ滅するまでに それは果なく拡がるであらう
岐路と邪路とをわれらは警めねばならぬ
農民芸術とは宇宙感情の 地 人 個性と通ずる具体的なる表現である
そは直観と情緒との内経験を素材としたる無意識或は有意の創造である
そは常に実生活を肯定しこれを一層深化し高くせんとする
そは人生と自然とを不断の芸術写真とし尽くることなき詩歌とし
巨大な演劇舞踊として観照享受することを教へる
そは人々の精神を交通せしめ その感情を社会化し遂に一切を究竟地にまで導かんとする
かくてわれらの芸術は新興文化の基礎である

「農民芸術概論要項」/宮沢賢治 より一文を抜粋

 


 
その他、今後の「野市」で取り組んでいきたい「循環する暮らし」へのプロジェクトなどなど、話題は尽きません。
 

唐津からの手紙

今回、佐賀県唐津市からメールで参加してくれたのは土人形作家の田中 泉さん。
会の最後に、泉さんからの手紙を読み、この日のために描いてくれたイラストを紹介しました。

田中 泉さんは2022年〜23年の夏まで渥美半島に滞在したアーティストです。

田原市にある、ファームステイの場を営む有機農家、「渥美どろんこ村」に滞在する中で、「渥美どろんこ村」が所有する古民家を舞台に農とアートと暮らしが一体となった場を探究する「暮らすギャラリー埴(はに)」を1年間主宰していました。

そんな泉さんは今年の春から、ご縁があり佐賀県唐津に引っ越し、夫婦で新しい暮らしをはじめています。

送ってくれたイラストに描かれていたのは豆に暮らす野の暮らし研究所で過ごした日々のこと。

今後も引き続き、田中 泉さんからは唐津での暮らしなどをテーマにしたジャーナルが届く予定です。

ーーー

ここでのトークの内容を全てお伝えすることは叶いませんが農学カフェの参加者それぞれの「自分の好きなこと」が仕事や人生に直結した生き方に刺激を受け、楽しく学びの多い時間でした。
 
 
◾️次回の「農学カフェ」は8/24(土) 19時〜 場所は同じくみんなの産直マルシェ Yottecoです。
聞き耳大歓迎。

みなさま今後もどうぞよろしくお願い致します。


 
 

メディアコモンズ
「SoiL-土と創造-」

「野市」と「農学カフェ」は、発信WEBメディアとして製作中の「SoiL-土と創造」と連動したかたちでのプロジェクトです。

交流と学びと創造が交差しながら豊かな文化が育まれることを目指し、渥美半島と全国各地の様々なライターからの発信と共有を繋ぐ場。只今準備中です。

こちらもお楽しみに。
 


2024/7/27
企画・編集 /明星ライブラリー
photo/Koshi Asano

 
 

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次